 <養豚経営に夢を託して脱サラ>
「母豚4頭からの出発」
経営者である高島さんは、農業とりわけ畜産とは全く縁のない都会育ちで、27才まで報道関係の会社でサラリーマンとして勤務していました。
しかし、自然の中で自由に仕事が出来、しかもサラリーマン感覚を取り入れた経営を実践したいとする氏の気持ちは強く、ついに昭和41年脱サラを決意するに至りました。
大自然の中で自由な仕事として夢を託せるものとは。それは高島さんにとって養豚経営への参入でありました。
ところが、非農業者である高島さんにとって用地の取得には困難を極めました。
そこで妻である芳子さん(北条町出身)の実家から用地を借りることで、土地問題を何とかクリアーし、中ヨークシャー種の母豚4頭を購入し、ここに奥さんとの二人三脚による経営はスタートすることとなりました。
以来養豚専業農家として、規模拡大を重ねながら今日の母豚100頭規模の一貫体系を確立し、着実な経営を歩んできました。
<規模拡大は儲けてから>
借金は嫌い
高島さんの経営理念の一つに、借金は作らないということがあります。
経営を安定させるため、無理な資本投資を避け、自己資本(儲け)を充当することで規模拡大を図ってきたことが、その後の経営安定に大きく寄与したことはいうまでもありません。
昭和41年、母豚4頭の子取り経営でスタートしてから昭和63年の間、5回にわたって規模拡大(現在は100頭一貫体系)のため、豚舎の増改築を行ってきました。
その投資額のうち借入金は農業近代化資金2回借りただけであり、残りは全て自己資金(儲け)を充当し、経営の安定を図ってきました。
その後においても、畜舎の改修、器材の更新及び購入等必要経費は全て養豚収入を充て借入金に依存しない堅実な経営を営んできています。
<儲けの秘訣は繁殖成績の向上>
「飼養品種の統一」「母豚の計画的更新(6産)」「更新豚は自家産」
安定した豚肉の生産には、品種の統一を図ることが必要であり、このため肉豚をLWD種とする生産体系がとられています。
母豚は6産で計画的に更新することとし、その更新用母豚は全て自家育成することで、計画的な育成、無駄のない更新を可能としています。
また、更新用母豚の作出に当たっては、防疫面も考慮にいれ、基礎豚(親豚)の導入先を限定するとともに、繁殖成績にバラツキが出ないよう配慮されています。
さらに、2産続けて産子数が10頭を下回った母豚については、即廃用するなど繁殖成績の向上には、特に気を配っています。
<効率的な管理の徹底(ウィークリー養豚の実現)>
毎日の管理を一週間のサイクルで体系化し、作業を単純化しながら効率的な管理に努めています。
1日の作業時間は、6時間以内
・一週間の作業体系
日曜日――午前休日 作業予備日
月曜日――子豚離乳 出荷豚体重測定
火曜日――分娩 作業予備日
水曜日――肉豚出荷
木曜日――午前休日
出荷用肉豚移動
金曜日――交配 作業予備日
土曜日――交配
<母豚の集約管理>
母豚5頭を1グループとして、分娩、離乳、発情、交配の同期化を図ることで作業の単純化、効率化に心がけています。
分娩については、基本的には無看護分娩であるが、分娩誘発剤を応用することで、昼間分娩を促し、分娩時の事故率の低下、介助作業の単純化を実現しています。
交配についても、離乳と同時に発情誘起剤を応用し、集中的に交配出来るよう配慮しています。
<省力管理のための工夫>
日常の管理は給餌と除ふん作業であるが、自動給餌機の導入、スクレーパーの導入、堆積床ハウス豚舎の建設など、省力管理に対する工夫を凝らしたことによって作業時間は大幅に短縮され、夫婦二人で2時間程度の実労働となっています。
このように管理作業の体系化によって1日の労働時間を6時間以内に抑え、日曜日と木曜日の午前中は休日に充てるなど、ゆとりある経営を実践しています。
そしてサラリーマン並の労働で養豚経営を立派に維持し、経営の豊かさによって日々の生活をエンジョイしています。
<ふん尿処理と衛生対策に対する工夫>
堆積床ハウス豚舎を設置しているが、氏は、古くから「ヒノキチオール」の殺菌作用に着目し、オガクズの消臭効果を加味し、国産ヒノキのオガクズを限定して使用しています。
また、発酵菌を飼料添加することで、臭いの軽減と発酵を促進させるなど、環境にも配慮した管理を行っています。
<常に安定した収益の確保>
高島さんの経営実績を見るとき、生産性が特に際だって高い数字とはなっていないにも関わらず、常に安定した収益を維持しています。
これは、投資は自己資金で、借金はしない。また投資額は出来るだけ安くとする氏の経営方針によって減価償却費を低く抑えていることが大きな要素であると同時に、購買者の好む豚を出荷することで枝肉を有利に販売していること(重量超過により格落ちで上物率は決してよくないが、枝肉販売単価は市場平均より30円程度高い)、さらに借入金がなく償還の必要がないことによるところが大きく、毎年20%を超える安定した所得率を確保しています。
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