・経営者としての原点
平成3年、突然夫が他界。途方に暮れる暇もなく200頭の牛を抱えての経営主としての新たな牛飼い人生が始まることとなった。
本人が経営主として経営を継承すると決断した背景には、結婚以来常に二人で経営に携わってきたものの、夫の後ろについて仕事をするのではなく自分に与えられた仕事は、自分の仕事として責任を持ってやり遂げること。それを夫が経営のパートナーとして認め、力に変えてくれた二人の生活があったところにその原点がある。
また、3人の子どもを抱え、やるしかないという強い信念があったことは言うまでもありません。
この、一人で150頭は飼えるという自信と強い信念は、今でも貫かれ誰も真似の出来ない女手一人による経営を支えています。
・経営戦略
労働力一人、しかも女性が200頭の牛を飼うに当たっては、それなりの整理が必要でありました。
そこで次の様な経営方針を定め実践されました。
牛を飼うことに専念し、草作りは断念する。従って、草作りに関係する機械は一日も早く処分する。
所得率が多少下がっても、人に頼める事は人に頼む。
この二点は最低の選択であり中でも経営の要である農業簿記への記入、牛舎作業に欠かせないショベルローダーの運転はどうしても避けて通れない課題で、一日も早い習得に努めることであった。
・記帳と経営分析
畜産経営者にとって記帳は経営管理のための第一歩。経営主はこのことをよく認識し、農業改良普及所の力を借りながらいち早くマスターし青色申告に活用することは勿論のこと、今ではコンピュータの導入で、数字の分析に努め、経営の改善に結びつけています。
・きめ細かな管理
牛舎内に入っても、牛はゆったりと落ち着いており喧騒感はありません。
これは女性特有の優しさが牛に伝わりストレスの緩和効果をもたらしています。
消毒、換気等牛舎衛生には気を配り、牛床、通路等も清潔に保たれ事故率の低減につながっていると同時に所得の向上に大きく寄与し、所得率は25%となっています。
また、哺育部門での事故も低く(5%以下)女性のきめ細かな感性が好成績につながっていると思われます。
・全ては自分の手で
素牛(ヌレ子)の手配から飼料、資材の手配等自分でできることは全て自分でこなし経営ロスの軽減に努めています。
特に、稲ワラは肥育経営にとって不可欠の粗飼料であるが、本人の人徳もあり地元を中心に100%確保しています。
・投資の抑制
現有規模への拡大は、夫が健在であった時に自己資金を中心として整備が終わっており、その後の新たな投資は車輌の更新にとどまっています。
このことが経営を有利に導いているといえる。
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