1 多岐にわたる課題解決のための努力
この研究会は、粗飼料生産基盤の少ない東部の水田酪農家が、水田酪農の抱える課題をいかにして解決し、酪農を安定的に発展させるかを研究する集団であります。
その取り組みは設立当初のビール粕などの粕利用によって粗飼料不足を補い多頭化への足がかりとしたのをはじめ、酪農経営を行うために解決すべき課題を取り上げ設立以来40年という長い活動を継続しています。
その主な活動内容は次のとおりです。
粗飼料の確保対策・・・ |
転作田の共同利用と飼料生産組合の設立(昭和53年)、サイレージコンクール(昭和55年)、TMR組織の設立、コントラクター組合(平成11年) |
後継牛対策・・・・・・ |
乳牛育成牧場の開設(昭和45年) |
乳質改善対策・・・・・ |
生乳品質改善コンクールの開始(昭和55年) |
飼養技術対策・・・・・ |
各種講演会、技術研修会、意見交換会、県内外視察研修の実施 |
組織強化対策・・・・・ |
婦人部(昭和43年)、青年部(昭和45年)の設立による仲間意識、連帯感の醸成 |
労務管理対策・・・・・ |
ヘルパー利用組合の設立(平成元年) |
拠点づくり・・・・・・ |
東部畜産農業協同組合の設立(昭和55年) |
消費者対策・・・・・・ |
生協との産直交流の実施 |
等々、酪農を取り巻く情勢の変化に対応しながら強い絆で結ばれた仲間意識のもと、種々の課題に取り組み会員の創意工夫でその解決策を見い出し、目的を達成してきた。これらの活動は県内でも高く評価され昭和62年、朝日農業賞県代表として推薦されています。
なお、設立10周年、20周年、30周年と過去3回にわたり記念大会を開催するとともに記念誌を発行(婦人部、青年部も同様)し、活動の記録を編集しているが、この様な事例は他になく異色の存在といえます。
2 多頭化への取り組み
会員の多頭化の推移は下表のとおりであり、県下に先駆けその多頭化が進んでいることが良く分かります。
一方、飼養戸数を見ると県下の戸数が昭和40年対比5.7%と大きく減少しているのに対し、研究会では45.5%の酪農家が経営を継続している点は大いに注目すべきであります。
このことは、研究会の存在が大きく関与し会を通した仲間意識と連帯感とともに熱心な活動の成果だといえます。
40年代・・・・・ |
粗飼料不足を補うため採用したビール粕利用による多頭飼育技術の確立と水田転作に伴う粗飼料基盤の確保で規模拡大が進む |
50年代・・・・・ |
農業構造改善事業、酪農団地造成事業、資金対応、水田再編指導事業、同和対策事業 |
60年代・・・・・ |
公社営畜産基地建設事業 |
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研究会 |
鳥取県(全体) |
戸 |
一戸当たりの
平均飼養頭数 |
戸 |
一戸当たりの
平均飼養頭数 |
昭和40年 |
77 |
4.9 |
4,940 |
2.5 |
45年 |
76 |
8.4 |
3,710 |
4.1 |
50年 |
56 |
22.8 |
1,820 |
6.3 |
55年 |
57 |
39.4 |
1,270 |
10.6 |
60年 |
49 |
41.4 |
830 |
16.5 |
平成 2年 |
52 |
40.8 |
620 |
21.6 |
7年 |
46 |
42.2 |
450 |
27.6 |
12年 |
39 |
41.2 |
330 |
33.0 |
15年 |
35 |
47.3 |
280 |
40.0 |
対45年比 |
(44.5%) |
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(5.7%) |
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3 各組織の設立
(1)粗飼料生産組合
昭和45年に始まった稲作生産調整による水田転作を契機に転作田の共同利用による粗飼料生産体制として、相次いで粗飼料生産組合(東郡家、西郡家、山東、青谷町等)が設立されているが、その設立にあたっては会員の交流活動の中から発案されたもので、粗飼料生産基盤の確立に大きな力を発揮しました。
(2)農事組合法人「東部乳牛生産組合」
昭和45年、規模拡大に必要な後継牛の確保を図るために設立され、3つの放牧場(美歎(みたに)牧場、平木山(ひらぎやま)牧場、志保谷(シボタニ)牧場)を開設し会員の育成牛放牧飼養を行い後継牛の育成確保に有効に機能した。この放牧事業は昭和51年県営放牧場が3ヵ所開設されたことに伴って中止され、以来育成牛は県営放牧場へ預託することとなりました。
(3)東部畜産農業協同組合
昭和55年「東部乳牛生産組合」は、発展的に解散して「東部畜産農業協同組合」(現在は鳥取県畜産農業協同組合)を設立し、会員活動の拠点的役割を果たしているとともに、酪農振興の補完的役割を受け持っています。
(4)東部酪農ヘルパー利用組合
月1回の休日を取れる酪農を目指し、昭和63年、定休型ヘルパー事業実行委員会を設立し、先進事例の視察検討、会員の意向調査を経て、平成元年、25戸で東部酪農ヘルパー利用組合を設立しました。
このことが鳥取県酪農ヘルパー事業組合設立の大きな原動力となっています。
(5)(有)TMR鳥取
研究会ではTMRの採用について様々研究を重ねた結果、平成11年「有限会社TMR鳥取」の設立となりました。
現在、18戸が利用し約1,500頭の牛(肥育を含む)に給与されており、飼料の安定供給に寄与しています。
また、平成13年からは飼料用イネの栽培普及に伴い、サイレージ化した稲発酵粗飼料を原料とするなど自給粗飼料の積極的利用を図っています。
(6)東部コントラクター組合
平成12年、飼料用イネの栽培普及に伴い、転作田等への堆肥散布から収穫まで扱う組織としてコントラクター組合を設立し、地域農業の維持に貢献しています。
平成15年度は約100haの転作田で飼料用イネの栽培を行い、8,434ロールを収穫し利用に供しました。
4 地域社会への貢献
上記3で設立された各組織は、研究会内部から誕生したものであるが現在はいずれも会から独立した型で存在しています。
また、独立に際し、地域に雇用の機会を創出し、各組織合計で100人を越える従業員を抱え、消費者交流を含め地域の経済活動に大きく寄与しています。
5 消費者交流
研究会員は全員、大山乳業農協の組合員でもある。大山乳業農協では昭和45年のコープ牛乳により、京都生協との間で盛んな交流が行われています。
コープ牛乳の誕生には、大山乳業農協の鳥取工場がその実現に努めた経過があり、産直交流の主力は県東部地域でありました。
また、研究会員の多くは鳥取県畜産農協の組合員であり、畜産農協は美歎牧場を中心に生協との産直交流を盛んに実施しています。
こうした交流活動には、研究会員も深く関わっており消費者への安心・安全の発信源になっています。
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